お疲れ様です。堺です。
当社では、AI活用によりDXや業務改善を目指す実験的取組「おしぼりAIプロジェクト」を推進しています。今般、パイロットプロダクト(iOSアプリ)公開にあたり、実際の開発現場や経緯などを紹介してみます。
同種のプロジェクトやDXに取り組む事業者様や開発者様などに役立つ記事になると思います。
※この記事は、当社がレンタルおしぼり事業者であるFSX株式会社様と共同推進する「おしぼりAIプロジェクト」のプレスリリースに合わせた公開記事になります。
※パイロッドプロダクト「おしぼりAI lite」がApp Storeに公開されています。ぜひお試しください。2022年末まで無料で使用可能です。
◇目次
おしぼりAIプロジェクトが描く、レンタルおしぼり事業の業務改革
おしぼりAIプロジェクトは、レンタルおしぼり回収数を客観的に測定し、材料費適正化と対顧客コミュニケーションを円滑化を目指す取り組みです。
「エッジAI」として開発:実務利用を鑑み、iOSアプリに深層学習モデルを直接組み込み
レンタルおしぼりの配送は、1日に何件も配送先を訪問しておしぼりの回収・納品を行う、ハードかつ時間に追われる業務です。また、通信状況が良くない現場も想定されます。
そのような中で使用するAIにするため、エッジデバイスとなるiPhoneに深層学習モデルを直接組み込むことが必要不可欠です。エッジ処理で完結することにより、通信待ちをすることなく瞬時に枚数推論結果を得るリアルタイム性を実現しています。
エッジAI実現のために、機械学習モデル開発用のオープンソースライブラリ「TensorFlow」および「Keras」、そして深層学習モデルをiOSでの最適化する「CoreML」(Apple社)を利用しています。
10万個超の教師データ取得がAI精度を支える
AI開発には教師データの作成が不可欠であり、おしぼりAIプロジェクトでは現時点で10万個超の教師データを採取済みの状況にあります。
箱の中におしぼりを数えて入れて写真を撮る作業に加え、その撮影データを基礎に一旦モデルを組み立て、現場で使用する中で画像データを同時に集めるという、2段階でのデータ収集体制を構築しています。
教師データ収集は、AIプロジェクト一般的に最も手間がかかり大変な部分です。
共同開発者であるFSX様では、現場の配送担当者様が日々実際にAI搭載アプリを使用し、教師データ増強に取り組んでいます。粘り強いご対応には本当に感謝しております。
また、著者自身も真夏の暑い中、屋外で一日中撮影作業を行い汗だくになり、体勢を固定しすぎて足が肉離れを起こすなど、思い返すと苦労した日々が思い出されます。
測定精度:96%のサンプルが25枚以下の誤差で枚数を予測
測定物の性質上、1枚違わず正解を出す測定は不可能ですが、開発初期段階においても概ね20~25枚以下の誤差に収まる結果を得ています。(熟練した配送担当者が見た目などで判断した場合と同等程度の誤差を、ベンチマークの一つとしています。人と同等でも、属人バイアスを排除できるため、価値があると考えています。)
本プロジェクトの目的である在庫把握は継続的測定に基づくものになるため、この制度でも十分目的達成するものと想定されます。
但し、現場でのデータを収拾しており、またアノテーション作業を行ったサンプル作成も日々行っていますので、今後も更なる精度向上が見込めると予測しています。
開発経緯:雑談での着想と仮説検証作業
このプロジェクトは、はじめはFSXの方とのちょっとした雑談の中で、「AIで枚数測定ができれば役立つのではないか」というところから着想を得ています。
折しも著者自身、早稲田大学などが主催する社会人教育プログラム「スマートエスイー」(スマートシステム&サービス技術の産学連携イノベーティブ人材育成)を履修しており、修了制作のためにAI活用によるソリューションを探していたところでした。
そのような中で取り組むことは決まりましたが、まずは本当に実現可能なのかを検証しなければなりません。
2020年7月頃、1ヶ月かけて教師データの撮影、スマホアプリ組み立て、AWS上のAPI開発など急ピッチで作成し、一連の流れがとりあえず動くPoC制作を行いました。
当時の検証から、概ねの精度で枚数を当てて、かつデータをサーバーに転送できそうだという感触はつかんでいたので、今日まで走ってこれたのだと思います。
ちなみに、スマートエスイーでの学習記について、関連記事を作成しております。是非、ご参照いただければ幸いです。
プロダクトの開発重点は、AIから周辺システムへ
AI活用は近頃キャッチーな話題ではありますが、PoCを見ていただければわかる通り、それ以外の部分(iOSやAPI開発、更にはビジネス面の検証や現場との連携など)を鑑みると、AIはプロジェクト全体のほんの一部でしかないことが分かります。
システム面から見てもAIが動作する周辺パーツの開発ウェートは大きいですし、ビジネス面でもAI活用がゴールになってしまってはプロジェクト成功や進捗はままなりません。
今後このような取り組みを行う方は、ぜひこのような全体を見渡した上でプロジェクト設計をしていただければと思います。(ご相談いただければご支援も致します。ぜひお問い合わせまでご連絡ください。)
謝辞
本プロジェクトは、上記の通りFSX株式会社様との連携により実現しています。改めてご協力感謝申し上げます。
また、スマートエスイーにおかれましても、指導教官様の丁寧な指導のもと、プロジェクトの立ち上がりをしっかり支えていただいたことで今日があると思っております。大変感謝しております。
今後も更なる発展を目指してまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
関連リンク集
AIの基礎的な仕組みについて、簡単に記事を書いています。
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