【スマートエスイー受講成果】
正規履修・修了制作の成果と活用状況、苦労した点などを紹介


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お疲れ様です。堺です。

私は「スマートエスイー」を2020年に正規履修性として受講し、独立後の事業にも学習成果を直接活用しています。今振り返っても、同講座は私にとって非常に重要かつ実践的な学びとなった講座だったと感じます。

また今般、修了生を代表してスマートエスイーコンソーシアムに登壇させていただきました。よいキッカケなので、今回は登壇報告とともに、受講生視点でのスマートエスイーの紹介、良かった点、苦労した点などの体験談を振り返って書いてみたいと思います。

スマートエスイーの正規履修を検討されている個人や会社様には参考になる記事になるかと思います。

※「スマートエスイー」:文部科学省 平成29年度「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)」 enPiT-Pro スマートエスイー : スマートシステム&サービス技術の産学連携イノベーティブ人材育成

※本記事は2020年度の受講成果について記述します。今後の受講にあたっては、その年度の募集要項などで講義内容を確認してください。

私自身の独立創業に直接役に立った、実践重視のカリキュラムでした。

スマートエスイーは、AIやIoTなどの先端技術を、ビジネスと技術実務を横断して再教育する社会人向けの学びなおしプログラムです。早稲田大学を中心に多数の大学が共同で参加しており、密度の高い講座でした。

後述するように、私はスマートエスイーで学んだ内容を現在の事業の一部としており、実践を強く意識した内容だったと感じます。

(画像引用)スマートエスイーのカリキュラムは、物理・通信、情報処理、アプリケーション、ビジネスの4分野を横断しており、技術のみならず社会的・産業的実装を視野に入れた内容となっています。引用元:スマートエスイー紹介冊子(2020年版・PDF)
(画像引用)スマートエスイーのカリキュラムは、物理・通信、情報処理、アプリケーション、ビジネスの4分野を横断しており、技術のみならず社会的・産業的実装を視野に入れた内容となっています

受講者も製造業企業の技術者など、既に一定の技術的バックグラウンドがある人材を対象としており、AIやIoTなどの先端技術をビジネス・技術面を横断した本格的な再教育が行われています。実際、企業から派遣された技術者も多く受講していました。

講義内容は実践に重きが置かれており、受講者としてもその想いを強く感じました。演習で機械学習モデルを実際に構築・評価してみたり、自身で企画したIoTツールのPoCを支給されたラズパイで製作してみたりなど、その後実際にIT事業を行うにあたり大変参考になったことを覚えています。

私自身のスマートエスイーでの学習の成果

私の個人的の成果として、スマートエスイー受講中に独立・創業し、スマートエスイーでの学びをそのまま現在の事業に生かしている状況であり、文字通り糧になった学びとなりました。

元々経営コンサルタントだった受講開始当時から、その後独立してIT関連事業を行うにあたり、重要な橋渡しとしての学習がスマートエスイーの期間だったと感じます。

コンソーシアム発表資料(本記事下の方に掲載しています)より、著者自身のスキルセットの変遷を抜粋。受講を通じて、ビジネス・テクノロジーの両面で事業を行う準備が整ったと考えています。
コンソーシアム発表資料(本記事下の方に掲載しています)より、著者自身のスキルセットの変遷を抜粋

受講以前からプログラミングは趣味として続けており、またコンサルタント業務の効率化に活用するなど、コーディング技術は一定有していました。しかし、本格的なアプリケーション開発や機械学習モデル開発、IoTなどは当時まだ経験がなく、とっかかりもない状態でした。そのような技術を本格的に身に着けたいと思っていた時期に、インターネットでたまたまスマートエスイーの募集要項を見つけたのでした。

実際受講を開始してみると、これまで何処から手を付けてよいかわからなかった本格的なサービス開発手法や最新AIに関する知識と技術などを手を動かしながら学べるため、自分の中での技術ラインナップを大きく広げる結果となりました

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特に印象に残った、ためになった講義内容

カリキュラム全体は非常に幅広い内容のため、個人的に印象に残った講義内容を簡単に紹介します。

見ての通り、開発実務からビジネスへの実装に至るまで総合的に学べる内容が含まれています。

機械学習モデル制作の実習

機械学習モデルを演習として作り評価するなどの一連の流れを講義内で行うため、やってみなければわからないけどやり方がわからない、という状態を脱却することができたのは、非常に良かったと思います。

私が受講した当時は、TensorflowとPyTorchという機械学習ライブラリの2大巨頭や、scikit-learnなどの有名ライブラリなど一通り講座で取り扱い、学習対象も画像・自然言語・ビッグデータなど一通り揃っていました。

特にTensorflowなどは、この時学んだ技術を今でも実際の案件でフル活用しています。

スマートIoTシステム開発実習

IaaS(AWS)やセンサ端末などを実際に使用して、5~6人のチームでPoC制作に取り組みました。

センサ技術に詳しい方、AWSに詳しい方などチームメンバーにも恵まれ、実際にそれらをどう使うのかを間近に見られたのはありがたい機会でした。

具体的には、1ヶ月くらいの期間内に、実際に開発を行い発表会にてプロダクトに関するプレゼンテーションやデモンストレーションなどを行うことを目標とする内容でした。

IoT/AIイノベーション科目、事例紹介

AIなどの開発手法を学んでも、ビジネスに応用できなければ意味がありません。これらのビジネス寄りの講義では、「どのような場面でIoTやAIが活用されているのか」の事例を知ることができました。

講義内では、最前線の現場で活躍されている方のお話を伺うこともでき、その後のプロダクトの提案活動などに役に立っています。

ラズパイ(Raspberry Pi)を使った電子工作などにも取り組みました。
ラズパイ(Raspberry Pi)を使った電子工作などにも取り組みました
開発実習では、M5Stickというアイテムを使い、センシングとクラウド連携を行いました。このコンパクトな躯体に、ジャイロ・加速度等様々なセンサが実装されており、MQTTやWi-Fi通信等にも対応している優れものです。こういったツールとの出会いもまた貴重な体験でした。
開発実習では、M5Stickというアイテムを使い、センシングとクラウド連携を行いました

修了制作「おしぼりAI」、制作過程とその後の活用(2022/1/28追記)

スマートエスイーでは、講座の総仕上げとして修了制作課程が設置されており、学習の総仕上げとして独自課題に取り組みます。後段でも取り上げますが、私は修了制作として「おしぼりAI」の制作に取り組みました。

おしぼりAIは、レンタルおしぼりの箱にカメラをかざすと、AIが画像を解析してオートシャッターとおしぼり枚数測定を行うiOSアプリです。
おしぼりAIは、レンタルおしぼりの箱にカメラをかざすと、AIが画像を解析してオートシャッターとおしぼり枚数測定を行うiOSアプリです

レンタルおしぼり事業者様の経営上の不効率をAIツールで解消する試みであり、その中核プロダクトである深層学習モデル搭載iOSアプリのPoCを開発し、発表を行いました。

クラウドやAIを使った全工程で手を動かすのは初めての経験だったので、総じて非常に学びのある課程でした。

おしぼりAIは、単なる測定ツールに留まらず、事業上の課題解決も仮説立てして取り組んでいます。正に、ビジネスとテクノロジーの相乗を重視するスマートエスイーの学びを生かした内容だったと思います。
おしぼりAIは、単なる測定ツールに留まらず、事業上の課題解決も仮説立てして取り組んでいます

修了制作課程での体験内容

各受講者毎に指導教官がついてマンツーマンでの指導を受けながら、1~2ヶ月の期間で自ら課題設定し、開発・検討し発表を行うという流れでした。

課題設定は、企業参加の方であれば自社内の課題を、私のような個人参加の方であれば身の回りや講義内容に着想を得た課題設定をしていたように思います。(公式サイトの修了制作のページに、毎年の修了生の課題と成果物が掲載されています。)

発表はプレゼン+ポスターの2つの形式です。私は幸いにも最優秀賞を頂戴したため、修了記念式典にてZoomを通じて数百人の方にプロダクトのプレゼンを行う機会を頂戴しました。

修了制作の経過

「おしぼりAI」の構築作業では、初めてのオリジナル深層学習モデル作り、初めてのiOSアプリ作り、初めてのAWSと、大半の技術要素が初体験という状態でした。短期間でやり切るのは大変でしたが、あえて期限を切ったことが良い結果をもたらしたように思います。

制作の中でも特に大変だった工程は、オリジナルの深層学習モデルを作るためのデータ撮影で、当時はおしぼりの箱をお借りして約半月くらい朝から晩まで自宅のベランダで箱の写真撮影をしていました。

修了制作の発表パワポより、アーキテクチャ図抜粋。この範囲を2ヶ月弱で作り切るのは、今思い返してもすごいエネルギーだったと思います。
修了制作の発表パワポより、アーキテクチャ図抜粋
独自の深層学習モデルを作成するために作成したデータセット。制作期間の前半は、iPhoneでデータ作成(写真撮影)を大量に行いました。ファイル名で枚数のアノテーションを行っています。
独自の深層学習モデルを作成するために作成したデータセット

時間の使い方としては、深層学習用データ集めと深層学習モデル構築に1ヶ月、AWS(Web API)とiOSアプリ構築にそれぞれ半月ずつといったところでした。

深層学習モデル構築の工程でiOSに搭載するための変換処理に2週間くらいハマっていた頃が、最も焦りを感じたポイントでした。

修了制作のその後の発展

修了制作として開発開始した「おしぼりAI」はその後も事業者様の力もお借りして開発継続中です。

現段階(2022/1/28)での主な成果としては、①先行プロダクトリリース、②特許登録完了、という状況となっています。今後も更なるビジネス展開のために開発を続ける予定であり、その基礎として修了制作は非常に重要なプロセスとなりました。

2022年1月6日付けで特許査定されました。共同開発先であるFSX様が特許権者であり、私の名前が発明者として表示されています。
2022年1月6日付けで特許査定されました

受講してみて大変だった点

特に開講直後は多数の授業が一気に押し寄せてきますし、それぞれの授業では大学の講義のようにレポート課題が課されます。授業を受けるだけでも時間がかかるのに、レポートまでやるとなると体力的にもそれなりの覚悟する必要があります。

社会人向けプログラムということで、夜の時間帯での開講という点はありがたいのですが、レポートまで作業しているとしばしば夜中までかかってしまうこともありました。

このように、本気で学ぶ姿勢がなければ挫折しかねない大変さは少なからずあったと思いますので、そのあたりは覚悟を決めて頑張りましょう。

(とはいえ、この講座に出ている方は自ら学ぶ意思を持ってこられている方がほとんどなので、大変だとは感じながらも皆きちんとこなしていたようです。)

本日(2021/12/11)のスマートエスイーコンソーシアムにて、修了生代表として登壇いたしました

本日のコンソーシアムでは、DXの動向と展望や、ゴール指向に基づくDX推進へのアプローチ調査研究WGの発表等のほか、修了生数人が登壇しDX事例としてそれぞれの修了制作などを発表するセッションがありました。冒頭で触れた通り、私は修了生の中の一人としてお時間を頂戴しました。

私の受講当時の修了制作「おしぼりAI」は、幸いにもその年の最優秀賞を頂戴しております。同プロジェクトは、産業へのAI実装を修了制作で実践した好例とご評価いただいており、おかげさまで今回のような講演で紹介する機会も度々いただいています。

「おしぼりAI」はすでに関連記事で述べた通り、修了制作発表後も当社で開発を継続しており、レンタルおしぼり事業における無駄の削減をAI活用により実現を目指し、引き続き取組しています。

関連記事:【AI開発・活用事例】おしぼりAIが描く業務改革/開発実務や経緯を紹介

↓講演におけるスライドを掲示します。おしぼりAIの近況に加え、学習成果の活用結果なども含めて報告をさせていただきました。

Youtubeに登壇の様子を掲載しております。

スマートエスイーのイベントでは、このように発展結果の共有機会や人的繋がりを拡大する機会を頂戴しており、修了後も受講効果を存分に活用させていただいています。

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