独立採算のための分社化はデメリットが多い。理由と代替案を紹介。

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こんにちは。堺です。

コンサルティングの現場でたまに相談される「事業の独立採算のため分社化する」という社長の方針ですが、私としては基本的にオススメしない立場をとっています。

理由を端的に言うと、1社維持に比べてメリットが変わらない一方、コストや手間の増加や実態把握の煩雑化といったデメリットが目立つためです。

個別に詳細を述べていきます。

独立採算目的での分社化のデメリット

分社化を検討されている方は、すでにメリットはご理解されていると思います。なので、まずは「何がデメリットか?」から整理していきます。

会計・税務の手間やコストの増加。特に知識面で現体制が対応可能か。

法人数が2倍になり手間が増えるのは当然のこと、更に現在の担当者(経理担当や顧問税理士)が複数企業体制に対応できるかどうかも要チェックです。

経理に関しては、単純に2社に増える以上の業務(会計ソフト操作、報告業務、連結会計等)がないか。対応可能か。

顧問税理士に関しては、グループ法人税制や連結納税(R4.4月よりグループ通算制度)等、新たな体制で生じる税務対応や適切な損金計上が可能か。

このように、手間の増加に加え、上記のような事項が現体制で担保できない場合、追加の人員雇入れや外注によるコスト増の可能性がある点に注意が必要です。

BSの実態把握が困難になる。管理能力不足が生じる懸念。

複数会社を抱えると、特にBS(貸借対照表)の実態把握作業が煩雑になりがちです。具体的に理由を列挙します。

複数会社を保有するグループにおけるBS管理の煩雑ポイント
  • 物質的実体がない売掛金や前払費用等の資産、債務の帰属に関してミスも起こりやすい。
  • グループ内貸し借り(資産・負債)が必然的に発生。一般債権債務に混ざるため、グループ全体としてのBS把握には専用の計算が必要。

BSの把握がキチンとできなければ、キャッシュ・フロー計算書による分析もできません。管理上好ましくない状態と言えます。

私が企業再生コンサルタントをしていたころ、ホールディングス体制にしたことにより管理能力不足が生じ、再生フェーズに陥った遠因となったケースも見てきました。そういう意味でも、この管理難易度の上昇は無視できない問題です。

新会社社長は銀行債務保証のプレッシャーを受けない。資金ガバナンスの問題、銀行にとって不安要素。

新会社が銀行借入を行うとなると、大抵の場合は分社化した社長か母体会社による連帯保証を求められます。

新会社の社長がそれまでは従業員として勤務していた人の場合、いきなり数千万~数億円の債務保証を行う覚悟ができる人はほとんどいないと思われます。

日本における経営者の多くは連帯保証債務のプレッシャーと戦うことも仕事の一部としています。そういった意味で、結局母体企業に債務の責任を負ってもらいがちで、本当の意味での独立とはいいがたい状態です。

また、連帯保証はガバナンス(企業統治・管理)面ではプラスに働くものですが、その影響を受けない新会社では、資金使途や資金投入の慎重さに問題が生じる可能性も考えられます。少なくとも銀行から見れば不安要素となることでしょう。

代替案は、事業別業績の計算体制構築。会計ソフトの「部門」機能を活用。

ここまで独立採算制目的での分社化のデメリットを述べてきました。代替案は、会社として分けず社内で独立して業績計算をする方法です。

多くの会計ソフトには、部門分けして収益費用計上できる機能が搭載されています。あらかじめ部門を設定し、仕訳入力の段階で部門フラグを付けておけば、損益を部門ごとに自動計算することが可能です。

会計ソフトの部門分けを活用できている会社は、私の経験上は稀ですが、放置するにはもったいない重要機能です。特に独立採算の業績把握において大変便利な要素となります。

事業別貸借対照表は重要性低い。事業EBITDAと資本的支出でキャッシュ・フローを把握。

現に事業部制を敷いている会社でも、BSまで事業別に計算している会社は稀です。なぜなら貸借対照表では損益計算書以上に会社共通項目(どの事業にも属さない資産負債)が多く計算が難しいためです。

とはいえ、部門別のキャッシュ・フローを把握したいということであれば、EBITDA(端的に言えば償却費計上前営業利益)と資本的支出から把握可能です。

あえて事業部別貸借対照表の計算は、管理面において重要性は高くないと言えるでしょう。

分社化するメリットがある場面とは何か?

デメリットが目立つ独立採算目的での分社化ですが、メリットがあるとすれば何か?を考えてみます。

従業員の賃金水準をクラス分けできる

同じ会社に勤務するなら、事業が違えど同じ賃金テーブルの待遇を期待するのが従業員の心情です。

例えばA事業は給料がいい、B事業にいくと給料が下がるといった状況では会社全体の士気に関わります。

しかしながら会社が違うとなればある程度の納得感は得られやすいため、賃金のクラス分けを行う目的で分社化するのはメリットがあると言えます。

節税につながる場合がある

分社化することにより軽減税率の恩恵を受けられたり、交際費上限などに関してメリットがある場合があります。

詳細は顧問税理士に要確認ですが、上述のようなデメリットと比べてどちらを優先すべきかはよく考えたうえで実行されることをオススメします。

後継者育成など、経営者としての教育が必要な場合

子会社化することで法的にも認められた法人を運営することになりますので、経営者育成には役立つ可能性があります。

ただ、これに関しても上述の通りデメリット、特に資金責任の欠如やガバナンス面が懸念されます。

まずは事業運営に関する権限移譲で代替する方法を検討するべきです。

それでも分社化するという会社様のための留意事項

税務上の非適格分割となる分割を行わない

会社分割を行う際は、税務上の非適格分割に該当しないかを注意する必要があります。

非適格分割に該当すると、会社や株主に法人税・所得税が課税される可能性がありますので、慎重に実施する必要があります。

必ず信頼できる税理士を起用したうえで実施するようにしてください。

株主の合意を取り付ける事前説明を

法令に定められる通り、会社分割を行うには株主総会の特別決議(発行済株式総数の過半数を保有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成すること)が必要です。

分社化を進めるにあたり、自社の株主構成を確認し、必要な説明を行っておきましょう。

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