【中小企業が採るべきIT人材の雇用戦略】
統計データなどを踏まえ、IT技術者兼コンサルタントの目線で考察

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お疲れ様です。堺です。

IT化、DXの要は自社IT人材であるが、社内にIT担当者を抱えている中小企業は稀である、という話を前回記事にしました。

IT産業とそこで働く労働者を取り巻く環境は激動の時代を迎えており、彼らを必要とし、雇用する企業としても意識改革が求められています。今回はその背景を、現役のIT技術者でありコンサルタントでもある自身の知見などを踏まえ整理します。

尚、IT人材を各産業内に繋ぎとめることの重要性については、前回記事をぜひご参照ください。

関連記事:中小企業のIT化・DXを阻む巨大な壁とは?実務からの経験・DX白書2021と一緒に考える

なぜ中小企業にとって自社IT人材が重要なのか?(前回記事のおさらい)

詳しくは上記関連記事をご参照いただければと思いますが、要約すると以下の通りです。

なぜ現代の中小企業にとって、自社IT人材が重要なのか?
  • 人口減少に伴う圧倒的な人手不足時代が目前に迫る。本格的な危機到来前に、IT化やDXによる業務・業界変革が必要となっている。
  • 効果的なIT化やDXの実現は、その会社・業界への深い理解が求められる。それは、ITベンダーに偏在する外注IT人材ではなく自社IT人材こそが必要であり活躍の場となる。

このような状況にもかかわらず、私が実際にコンサルタントとして中小企業の現場を見てきた限り、実際にIT担当者を抱えている中小企業は本当に稀でした。それは何故でしょうか?

旧来の経営者の認識では、もはやIT人材の継続雇用は困難

IT人材とそれらを取り巻くIT産業の状況は、ここ10年を見ても大きな変化を起こしています。

この様な中、IT人材を登用したい、あるいは既に雇用している多くの経営者層の認識は、旧来の認識に取り残されてしまっているようにも見受けられ、それがIT人材と産業との隔絶の一因となっていると考えています。

次のセクション以降、具体的にどのような潮流が足下で起きているのか、またそれに対する方策はどうするのかを、具体的なデータなども交えながら検討していきます。

システムエンジニアの需要・賃金水準は近年上昇している

2010年代のIT産業は、ニューラルネットワークを中心としたAI技術が勃興し、またオンプレシステムからSaaS(Software as a service、サービスとしてのソフトウェア)への転換が進むなど、激動の10年だったと言えます。

この様な潮流の中、IT技術者のニーズもWeb・インフラ・モバイル等の分野を中心に着実に増加しており、統計情報を見ても求人倍率の上昇が進んでいます。

下図は、転職専門企業dodaによる転職求人倍率(求人数(採用予定人数)÷ 転職希望者数)の2014年4月以降月次推移を示しています。

全業種が2~3倍前後を上下している中、IT/通信業はほぼ一貫して5倍以上を維持していることが分かります。

また、特に2018年以降からコロナ禍前までは全職種を差し置いて概ね7倍以上の高水準に移行しており、またコロナ禍後でも依然として強さを保っています。

転職求人倍率の月次推移。データ参照元:doda転職求人倍率レポート
doda転職求人倍率レポート

この様な様相も反映し、システムエンジニアの賃金水準を世代・性別の別に統計情報を比較してみても、2010年当時に比べ直近データ(2019年)には多くの世代で上昇を果たしています。

性別・年代別の年収年次推移統計。データ参照元:厚生労働省 賃金構造基本統計調査(e-statよりデータ抽出)
厚生労働省 賃金構造基本統計調査

他方、定性的に状況を考えても、元々IT業界は人の入れ替わりが多い領域であった上、特にここ数年は社会全体的に転職に対して寛容になりつつあることを感じさせます。

更に近年は転職・スカウトサービスなどに特化したSNS等の拡充が進んでおり、労働者の背をより後押しする環境が整っていることも特筆すべき点です。

以上のことを踏まえると、IT人材にとってもはや1社に長くとどまる必要性は以前に比べ低下しており、より良い待遇や環境を求めてますます転職性向を強めている状況といえます。

反対に中小企業の経営者から見れば、これらIT人材を繋ぎとめる難易度は着実に上昇し続けており、この状況を踏まえて旧来の人材戦略を柔軟に調整していくことが求められています

もう一つ考慮すべき事項:独立・フリーランスとしての働き方の流行

もう一つ近年の見過ごせない動向が、会社に雇われない独立・フリーランスとしての働き方が流行しているという点です。

日本政府としても「新しい働き方」として兼業・副業やフリーランスを推進しており、昨今のコロナ禍の影響もあってか、2021年はフリーランス人口が前年比1.5倍に増加するなど顕著な人口増加を見せています。

フリーランス人口推移。出展:Lancers フリーランス実態調査 2021
フリーランス実態調査 2021

IT系におけるフリーランスとしての働き方は、企業勤めに比べて報酬単価が高く、またスキル習得面でも現場移動の流動性が高いため優位とされる場合が多いのです。また、ご存じの通り開業において特段の不動産や設備が必要ではなく収益性も良いため、独立するにおいては人気業種とされています。

企業経営者としては、このような新たな働き方も踏まえつつ、自社の待遇や働きやすさと比べて値踏み されていることを認識したうえでIT人材(特に20~30代の若手)との接し方を考えていく必要があるということです。

IT人材の評価は、自社産業分類の基準ではなく、IT産業全体の基準でプロフェッショナルとして見る必要がある

これまで多くの中小企業では横並びを基本とした給与体系を維持してきました。それは従業員同士の無用なあつれきを避けるためであり、その制度の中ではIT等のプロフェッショナル人材も同等に扱われてきました。

しかしながら、ここまでで見てきた潮流を踏まえると、そのような雇用体制の維持は既に厳しくなってきていると考えられます。

各産業には相応の賃金相場があり、その相場を基準に給与テーブルを組んでいる企業が大半です。しかしながらことIT技術者に関しては、転職による流動性を考慮するならば、IT産業全体(他社・独立の場合)を見渡したうえでの評価基準を用意する必要があると言えます。

統計データより、業種別月額賃金。情報通信業は、全体の中でも高めの水準。データ参照元:厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況
令和2年賃金構造基本統計調査

上記のデータでは、情報通信業は他の多くの産業に比べ賃金が高めとなっています。

雇用流動性が高まった今、平均賃金が情報通信よりも低い産業で同じ賃金テーブルに技術者を当てはめることは難しくなっているのは自明といえます。

この矛盾が、各企業で技術者が不満を蓄積させ、突然の退職意向などを誘発させている要因にもなっている印象です。

非技術者がIT技術者の賃金相場の理解を進めたい場合、どうすれば?

では、実際どの程度の賃金水準が妥当なのか?という問題は、非技術者にはハードルの高い考察ではありますが、例えば転職サイトやフリーランス人材募集サイトなどで研究してみることも一案です。

ちなみに転職用のポータルサイト(例えばリクナビネクストなど)は少なくとも10年以上前から数多く存在していましたが、近年はフリーランスとして仕事を発注するためのマッチングサイトの類も数多く存在しています。(本ページでデータ参照元としたLancersもその一種です。)

もし本格的に技術者のスペシャリスト評価に踏み切るのであれば、専門家に相談するもの良いですが、この様なWebサイトで調査してみるのも一案でしょう。

結び:IT産業全体の潮流を理解し、的確な人事戦略を。

繰り返しになりますが私個人的には、ベンダーに偏在するIT人材が、もう少し産業に回帰したほうが日本企業全体的に良い効果をもたらすものと考えています。(冒頭の関連記事でも書いた通りです。)

そのためには、日本の屋台骨を支える中小企業の経営者が本記事で記載したような事柄を理解し生かしていくことは、今後の社会に立ち向かう上では必須と思われます。

今後の人事戦略を検討する中で、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。今回も有難うございました。

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